主役でも脇役でもないあり方|サトウアサミ

No.002

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第2回目はテキスタイルデザイナー / グラフィックデザイナー / イラストレーターとして幅広く活躍するサトウアサミさん。一言ではカテゴライズできない作品のルーツは、一体どこからきているのか?


『〇〇系』と決めつけてしまうことが、必ずしも良いことではないと思う。

ー サトウさんの作品は、一見欧風なのに『和』も感じとれるなと勝手に思っていまして。

それ、よく言われます!原画は基本的に墨で和紙に描いているので、そこからそんな空気感が出ているのかもしれませんね。

ー 墨で和紙に書くこだわりはどこから生まれたんですか?どういったきっかけでそのスタイルになられたんですか?

札幌のデザイン学校に通っていたんですが、よくある平面構成とかの授業を受けている時から、学生なりに『自分のデザイン』というものを探していて。ある時、棟方志功(※1)の大きい展示会が地元で開催されていたので、興味本位で行ってみたんです。そしたら、よくある棟方志功の作品ではなく、和紙にちょろって黒い木版画で刷ってあって、そこに、鬼のようなものが赤くぺたっと描かれてたんです。凄く渋いんですけど「これは好きなやつだ!」って思って。ちょっとびっくりしたのを覚えてます(笑)

※1 棟方志功:読み・むなかたしこう。青森県出身の板画家。ゴッホの『ひまわり』をみて感銘を受け、「わだばゴッホになる」と上京。その後、川上澄生の版画「初夏の風」を見た感激で、版画家になることを決意。20世紀の美術を代表する世界的巨匠の1人。

ー ビビビ!と来た感じですね。

そうなんです。その時に「こういうのやりたいなぁ」と思って、そこから木版画をはじめて。短大の時に個展も開いたんですが、その結果、満足じゃないですけど「楽しかったな」と一区切りついた時期があったんです。その時に木版画の制作工程として、ベニヤ板に直接墨で絵を描いていたので、そのなごりで、自然に和紙と墨に移行していった感じです。洋紙に墨で描く場合もあるんですが、基本的には和紙と墨で、色を付ける場合はアクリル絵具を使用しています。

ー ということは、『和』は全く意識されていないということですよね?

日本的なものに向かいたいと、自分で意識して制作はしてないですね。

ー そうなんですね。話は変わりますが、ご自身でも述べられているように、サトウさんの作品はなかなか一言では言い表せず、人に紹介させていただく際に、なんて説明したらいいんだろうっていつも悩みます(笑)

自分が好きなものですら『〇〇系』『〇〇風』のどれに当てはまるかわからないくらいなので、私もわからないんですよ(笑)ただ、そうやって捉えてもらえるのはすごく嬉しいです。特定のスタイルを目指している人も多いとは思うんですが、そのプロセスを踏まず作品が出来上がっていく場合も多々あるので、『〇〇系』と決めつけてしまうことが、必ずしも良いことではないのかなと最近思うんですよね。ただ、自分が好きなものの絵面だけ見ていると、好きものは統一されているなって分かります。

ー 型にはめる必要はないのかなと私も思います。サトウさんの場合、イラストを描かれていたり、パッケージやロゴデザイン、もちろんテキスタイルデザインもされていますが、肩書きはどうされてるんですか?

難しいんですよね(笑)

ー(笑)ちなみに、今、名刺にはなんて書かれてるんですか?

書いてないんです、肩書き。「サトウアサミデザインオフィス」って英語で書いてあるので、それで「汲んでくれ!」っていう気持ちです。雰囲気で伝えてる感は否めないですね(笑)

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私の絵を置くことで、どれだけその場所の空気感が変わるか、生活風景を考え、その中の一部ということを想って筆を進めている。

ー デザイナーを始められたのは、ご両親の影響もあったりされますか?

それは大きいと思いますね。父は建築デザイナーでしたが、母も仕事をしていて、共働きの家庭でした。母はちょっとヤバイくらいバイタリティがある人で(笑)母は手先を動かすのが好きで、何をするにしてもとことん極めるんですよ。私だったら面倒だなって思ってしまうことも、トライ&エラーで一つずつ潰していって、使えるものを探っていくということを常にしていて。レジン作品(※2)も、とことん突き詰めた結果です。インテリアに今も興味があるのは、父の仕事の空間的なところだったりするんでしょうね。小さい頃から、何かをつくることが近くにあって、つくるということに対して、抵抗のない環境だったかもしれません。

※2 レジン作品:サトウアサミさんのお母さまである、サトウカズコさんのレジン(樹脂)を使った作品。詳しくはこちら

ー ものづくり以外の職業を考えられたことはありますか?

うーん、他のことをやりたいってあんまり思わなくて。小さい時から、大人になったら「とにかく働く人になりたい!」っていう思いがあってそれに向かって生きてきたので、ゼロから考えて作ることが全然苦じゃないんです。自分の色を出していける仕事を続けて行きたいですね。

ー 札幌で暮らされていた期間が長いと思うんですが、上京されたきっかけは何だったんですか?

ちょこちょこ仕事の営業で来ていて、東京の仕事も増え、もうちょっと仕事の幅を広げたいなって思った時に、札幌ではない場所でやってみるのも面白いかなって思ったんです。故郷なので札幌は大好きですが、ひとつの場所でずっとやり続けることに違和感があったんですよね。

ー そうなると、場所は東京でなくてもアリってことですか?

そうですね、今のところプランはないですけど、もしかしたら海外かもしれないし。必ずしも東京という場所じゃないといけないってことはないですが、都市が好きなので、ビジネスの中心になっている場所を選びそうです。

ー 制作の際は、毎回コンセプトを決めて進められているんですか?

クライアントさんありきのお仕事の場合は、タッチの提供なので、なるべくお客さんの要望に寄り添うようにしています。オリジナルワークは、ちょっと『デットストック』ぽいっと言いますか。

ー 詳しく教えてください(笑)

例えばマリメッコ(※3)とか、たまにマリメッコ特有のパターンじゃない部分の、デットストック(※4)の生地を売り出したりするじゃないですか。その感覚が好きなんですよ。うーん、なんだろうな(笑)引き出しの隅っこにある感じで、控えめではないけど、主役じゃなく。でも、ずーっと手元に置いておきたいっていうか。

※3 マリメッコ:1951年にフィンランドで誕生した、独創的なプリントと色づかいによって世界的に広く知られるデザインハウス。

※4 デットストック:新品未使用ながら、売れ残りや型落ちになった品で、通常の値段より安く買えるもの。

— 個人的にサトウさんの作品はどれを見ても埋もれず、でも他のものをひきたてつつ、自然と馴染んでいるなと常々感じていたんですが。

あー、でもそうかも。もちろん、大きくて「どん!」と真ん中にくる絵を描いてはいるんだけど、そのポジションというよりは、隅っこのものの気持ちというか。だから、インテリアに合うもの、生活の中の一部っていうのを想って筆を進めている感はあるんです。生活の風景やトータルな空間を考えながら、描いている気がしますね。こういう空間にはこういう絵があったらいいなとか、こういう存在感がいいなって。その絵で何かを伝えたいってことではなくて、私の絵を置いたことで、どれだけその空気感が変わるかということに注力しています。

ー デザイナーさんっぽい考え方ですよね、とても。

そうかもしれないですね。絵の依頼だけ頂いても、どんな空間に飾られるのかを見てから制作させていただく方がありがたいですし。その場に行けない時は図面やパース(※5)も見るし、設計したデザイナーさんの意向とか、ディスプレイされるパーツとかを見せてもらった上で絵を提案するようにしています。意識したことはなかったですけど、そのスタンスは好きですね。

※5 パース:建物の外観や、室内を立体的な絵に起こしたもの

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事業が拡大してもずっとプレイヤーでいつづけたい。

ー 今後、仕事の幅をもっと広げていきたいという願望はありますか?

あります!今まではサトウアサミ名義で20年やってきましたが『アセンダダ(※6)』をつくったので。

※6 アセンダダ:サトウさんが代表を務める、テキスタイルデザイン主体の会社。詳しくはこちら

ー なぜ『アセンダダ』を別で設立されたんですか?

テキスタイルデザインはずっとやりたいと思っていたんですけど、やっぱり1人仕事では金銭面的にも難しく。上京してから、都内のシルクスクリーン工房を紹介してもらって、骨折れるんじゃないかと思いながら、大きいサイズの型づくりから全て自分でやってましたね(笑)生地を制作するのに適した場所ではなかったので、平台の上で無理やり刷っていて、5m刷るのにも3週間くらいかかるわけですよ。でも、図案を考えて、それがプリントされたものを見たいってことで、4年近く同じ工程を繰り返していましたね。

それを見ていたお付き合いのある会社の社長さんから、ブランドとして立ち上げるお話をいただき、それで法人化したんです。現在は私がデザイナーを務めていますが、将来的には外部のデザイナーさんにも加わってもらいたいという展望を持ちながら土台を作っている時期です。そんなに大きく動いているわけではないんですが、知ってもらうための手段を模索しながら進めているところですね。最近、「サトウアサミなの?アセンダダなの?どっちなの?」と言われることが多くなってきたんですけど、まだまだグラデーションの時期で、はっきり決められてないんです。

ー 『アセンダダ』にはテーマはあるんですか?

あんまり女性っぽいスタイルは好きではなくて、女っぽいものはちょっと違うなと思うし、ムキムキな男っぽいのも無理だなって。『真ん中』という考えが好きなので、作品もそうあってほしくて、だから、男の人にも使ってもらえるようなテキスタイルを作りたいと思っています。

ー 最終的には『アセンダダ』をメインに活動される予定ですか?

そうですね。まあそれに向かってやっていきたいかなって思っています。これからどういうことができるかという打ち合わせもちょこちょこしていて、そこでは、焦らず丁寧にやっていこうってことで話しています。まだブランドを立ち上げて3年くらいなので、浸透も露出もそんなにしてないから、サトウアサミ名義も続けつつ、それとは別で、自分がやりたいことを『アセンダダ』ではやっていきたいですね。将来的には、ホテルとか建築物や、飛行機、電車などで使ってもらいたいなと思ってます。ずっとプレイヤーではいつづけたいですね。

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サトウアサミ

1977年 札幌出身。
1997年に制作活動を開始。2007年よりサトウアサミデザイン事務所として、絵や図案の制作、そしてその絵や図案をデザインに落とし込むまでを一貫して行うスタイルとなり現在に至る。
空間でのアートワーク、プロダクト、パッケージデザイン、テキスタイルデザインなど様々な媒体を通して作品を発表しています。 

SATO ASAMI Design Office
http://satoasami.com/

2015年アセンダダを設立。サトウアサミがデザインを手がけるテキスタイルの企画・製造を行います。
ASENDADA Co., Ltd. http://asendada.com

Mana Ohtake