ものづくりは、自分の価値であり、生きていく目的でもある《前編》 | アッシュ・ソープ(Ash Thorp)

No.003 

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少し間が空いてしまったが、第3回目はアッシュ・ソープ(Ash Thorp)さん《前編》。いち個人のwebマガジンのためになんて、きっと無理だろうなと期待度ほぼゼロの中ダメ元でインタビューを打診したところ、まさかまさかのOKが!30分と限られた時間だったが、仕事からプライベートまで幅広いお話を聞くことができた。


今やっていることは全て僕にしかできないこと。だからそれが僕の価値となる

ー 今回インタビューを受けていただくことに快諾していただき、ありがとうございます!私、今、とても興奮しております!

こちらこそありがとう。30分という短い時間しかありませんが、役に立てると嬉しいです。

ー 役に立つどころか、一生忘れません!それではまず、なぜ今のお仕事を始められたのかお聞きしてもいいですか?

もともとデザインすることや、ものをつくることが好きだからこの仕事を始めました。お金のためや、他の人のためにこの仕事を今も続けているわけではなく、仕事は僕にとって生きていくための目的でもあるんだと思います。続けている理由をもうひとつ挙げるのであれば、僕がものつくりに対してまだまだ夢中だからですね。

ー 仕事という感覚ではやられていないということですね。ものづくりにおいて、アッシュさんにしかできないことはなんだと思いますか?

今やっていること全てが僕にしかできないことで、それが僕の価値なんだと思います。僕は僕の意見しか持ち合わせていないけど、そこから価値が生み出せるからこそお金を稼ぐことができると思っています。作るものすべてが僕の魂や芸術的感性から発せられているものなので、僕がやっていることは僕以外誰もできないはずです。

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インスピレーションはどこにでも転がっている。

ー 作品を制作される際のインスピレーションは、どこから受けることが多いですか?

インスピレーションは、過去の名作や他の人が作ったものから受けることが多いです。でも、それらに限らず、色んなものから受けていますね。本、映画、それに、旅行からも。経験からインスピレーションを得るときもありますし、柔術をしているので、柔術から受けることもあります。本当に何からでもインスピレーションを受けることができるんですよ。自分の子供の頃の思い出だったり、昔インスパイアされた人からだったり。生活しているだけでもインスピレーションは、ありとあらゆるところに転がっていると思います。

ー 閃いた時はメモを取ったりされているんですか?また、どのようにアイディアを広げていくんですか?

基本的にメモを取るようにしています。そしてそのメモを基に、スケッチブックにアイディアをまとめていっていますね。メモを取ることによって、ベーシックなアイディアを実現的に落とし込むことができるんです。アイディアが生まれたら、それについて熟考し、一度頭の中で寝かせます。これらは全て頭の中で行うことなので、考えがまとまったら、考えをアウトプットするためにスケッチを描いて制作に取り掛かります。このプロセスも以前は時間がかかる作業でしたが、時が経つと共に慣れてきてだいぶ早くできるようになりましたね。閃いたことを、そのままの感覚で作りあげていくということは今まで一度もしたことがないです。基本的には僕の頭の中から始まり、座ってじっくり考え瞑想し、どうすればこのアイディアを実現することができるんだろうと考えることが多いです。

ー どのくらいの時間を、考えることに費やされるんですか?

考える時間と制作時間を比率にして例えるなら、うーん、多分10-20%を考える時間に使っていますね。作るものによって、もうちょっと時間がかかることもありますけど。もし一日の稼働時間を8時間として換算するのであれば、最初の1時間、もしくは、1時間半を瞑想する時間に使って、その他の時間は、その考えたことをネットやプログラムを通してクライアントやオーディエンスに伝えることに充てています。

ー 新しい仕事をされる際に、リサーチはやはり欠かせないものですか?

そうですね、時間が取れる限り、リサーチをするようにしています。ただ、リサーチをする時は、自分が知らないトピックがある場合が多いです。今作業している映画は、ビッグバンによる宇宙塵の誕生から、人間を発展させる人工的生活の単一性に至るまでの人類の進化に関連するものなので、今はサイエンティストの興味深い会話をポッドキャストで聞いたり、AIの記事を読んだりして、それらが本当にどういう意味で、どんなことをもたらしているのか探求しています。リサーチをして情報をあらかじめ得ておくことで、制作フェーズに入った時に、どの方向に進めていけばいいかというサポートにもなりますしね。

From film《Assassins Creed》

From film《Assassins Creed》

From film《James Bond - Spectre》

From film《James Bond - Spectre》

 

うまくいけば成功につながるが、うまくいかなくても結果は全て返ってくるので、常に責任を負う覚悟が必要。

ー アッシュさんは常にお一人で仕事をされている印象があるのですが、チームを組んで仕事をされることもあるんでしょうか?

主に、妻と僕で仕事をしています。妻はプロデューサーで、彼女が僕に案件を渡し、僕が実際に手を動かすいう感じです。案件にもよりますが、規模が大きいものだと友達に依頼してアニメーションの部分を手伝ってもらったり、他の人と一緒にやったりすることもあります。こういう仕事の仕方なので、場所関係なくできるといえばできますね。大きいチームをビルドアップして案件を進めていくのではなく、普段から小さいチームを好む傾向にあるかもしれません。小さいチームで効率的にスマートにやっていくのが好きですね。

ー 誰かと一緒にプロジェクトを進めていくと、お互いに衝突したりすることはありませんか?

コミュニケーションの取りづらさが原因で、今までに2回くらいぶつかったことはあります。案件によっては同じ場所で一緒に作業をする人もいますが、僕の職場は自宅なので、コミュニケーションが取りづらくて衝突することはあります。主なやり取りの方法はe-mailやチャット、スカイプや電話を使うので、全てが伝えきれないゆえのミスコミュニケーションはよく生じているかもしれません。同じ場所にいないことで、顔の表情を読み取ることが困難で、どうしてもミスコニュニケーションは生まれてしまいますね。対策としては、コミュニケーションを円滑に行うということもそうなのですが、問題が起きてもパーソナルなことだととらえず、起きてしまったことは改善するとして、気にせず先に進めるようにしています。今の環境のまま続けるのであればそれぐらいしかできないですしね。

ー 確かに、パーソナルなことと思わなければ割り切れるかもしれませんね。自分の意見と相手の意見が分かれてしまった際には、どう対処されていますか?

僕がディレクションをしている仕事は、基本的に僕の意見を尊重してもらうようにしています。でも、別に他の意見を受け付けないとかそういうことは全くなくて、むしろいつでも言って欲しいです。アウトプットされる完成品に、僕のエゴが入るのは良くないことだと思っているので、最終的な完成品はどうなるのがベストか正しく判断することが大切だと思っています。なので、もしより良いアイディアを持っているのであれば、ぜひ教えて欲しいですね。ただ、そのアイディアには必ず論理的な理由がないといけません。ディレクションをするということは責任のあること。だから、作り出すものはユニークで、さらに特別でないといけないのです。うまくいけば自分の成功へと繋がりますが、うまくいかなくてもその結果は自分に必ず返ってきます。だから、理由のないただの意見は受け付けることはできません。

《Passages》

《Passages》

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同じ人間でも、考え方は違う。だからもっと上を目指すことができる。

ー ご自身に対してかなり厳しいと思うのですが、これだけは絶対に妥協しないというものを教えてください。

クオリティですね。クオリティだけは絶対に妥協できないし、今まで一度も妥協したことはありません。僕にとってプロジェクトに終わりはありません。やろうと思えばどこまでもブラッシュアップし続けられます。でも、期日は必ずあって、それまでには終わらせないといけない。だから、一定の基準のもと制作していくのはとても重要だと思います。常に一定のレベルまで到達していないといけないと思うし、もしそうでなければやる意味がないと思っています。どの仕事も全力を注ぎ込んでいるので、自分が作るものは1コマ1コマ誰が見ても、高く評価してもらえるようなものではないといけないと思って制作しています。

ー 良いクオリティのものを作るということ自体が、制作のモチベーションに繋がっているというわけですね。

そうですね。自分が持つ力以上のことに挑戦して、さらに良いクオリティにしていくことにモチベーションを感じます。過去の偉大な作品がどうやって作られていたのかを解明することも、モチベーションに繋がりますね。例えば、今とある方の本を読んでいるのですが、彼が仕事に注いだ時間や努力を僕も同じように注げば、僕にも同じことができるんじゃないかって思うんですよ。彼がやってきたことと同じ道を辿るのだとすれば、彼と僕の間にそこまで大きい違いはないと思っているんです。でも大きな違いもあって、私たちは同じ人間ですが、別々の考え方を持っています。その事実が僕にとってはインスピレーションであり、もっともっと上を目指せるという目標になっています。

犠牲にしないといけないものが多々あることも十分理解しているのですが、モチベーションを保ったまま10年以上同じプロジェクトを続けられたら、きっと良いクオリティのものが作れるとも思っています。そう考えることも私にとってはインスピレーションになるんです。

《LOST BOY - ART》

《LOST BOY - ART》

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アッシュ・ソープ(Ash Thorp)
 

デザイナー、ディレクター、イラストレーターなどマルチで活躍。最近では『GHOST IN THE SHELL』、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』、『ブレードランナー2049』などの作品に携わる。Filmだけでなく、ゲームやテレビのコンセプトデザインやアートディレクションも手がける。

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Mana Ohtake