楽しいと思えなければ、やらない方がいい | 徳永明子

No.004

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第4回目は《あかるいねこ》の作者でもある、イラストレーター / デザイナーの徳永明子さん。《あかるいねこ》はなぜ生まれたのか?また、イラストレーターになられた経緯を直接ご本人に聞いてみた。


自分色を出せるイラストを描くことは、私にしかできないこと

今日はよろしくお願いします!はじめに、なぜものつくりを始められたのかきっかけを教えてください。

中学生の時にトレインスポッティング(※1)を見て、これがおしゃれなグラフィック!!って衝撃を受けて、そこからタイトル文字だったりかっこいいポスターとか見るのが好きになりました。あと、小さい頃からとにかく絵を描くのが好きだったので、 絵も文字も勉強できるところ=(イコール)美大という認識があったんです。出身が長野で、東京みたいに具体的な美大の情報が盛んに飛び交っている状況ではなく、美大一覧みたいなのを見ていたら、当時グラフィックデザイン学科があるのは多摩美しかないような印象を受けて。そのまま多摩美に入学して、その流れでものづくりは続いてるという感じです。

※1 トレインスポッティング:1996年に公開されたダニー・ボイル監督、ユアン・マクレガー主演のブリティッシュブラックコメディ映画。ヘロイン中毒の若者たちの日常を斬新な映像で描き、日本で大ヒットとなった。

大学に入ると、他の学科が実際にどんなことをしているのか知ることができますが、多摩美に入学されてから、これもやってみたいなーという進路変更みたいなものはありましたか?

特になかったですが、強いて言えば、映画業界への憧れはありました。

多摩美を卒業されてからは、ずっとデザインをされていたんですか?

そうです。デザインとイラストですね。

どちらの比重が重いとかありますか?

卒業した時はデザイナーになろうと思って、デザイン事務所に入ってデザインの勉強をしていました。でもその間もずっと絵は描いていて。今はイラストレーターとして活動しています。

私は、徳永さんはイラストレーターさんだという意識の方が強いですね。

デザインももちろん好きなのですが、デザインをメインにしている人は私よりもデザインのことをずっと真剣に考えていて、そういう人が周りにいるので、デザインは他の人に任せていた方が私がやるよりも面白いものができると思ったんです。そしたら「私がやる必要ないかな」ってなって。 イラストをメインにした方がより自分を活かせるし、やっぱり絵を描くのが好きだなと改めて感じてイラストレーターになりました。

ー つらいって思われたりすることはないですか?

仕事でつらいと思うときはそんなにないです。基本楽しいですね。大変なときもありますが、頑張れば乗り越えられますし。

確かに、おっしゃる通りです。つらいと感じてしまう私は、きっと頑張りが足りないんだろうな(笑)

もちろん、大変だと思うときはありますよ(笑)

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徳永さんといえば、やはり《あかるいねこ》のイメージが強いのですが、あのキャラクターはどのようにして誕生したのですか?

学生の時に、ずっとらくがきで描いていたんです。《あかるいねこ》は、私が思っていることを代弁してくれて、陽の部分が反映されているのがあのキャラクターです。猫が好きってこともありますけど。

徳永さんを投影した、分身的存在だったんですね!

そうですね。相当ヤバいですけど(笑)

ー (笑)《ふつうのいぬ》は後追いですか?

そうです。《あかるいねこ》だけだと表現できないシチュエーションも出てきたということと、やっぱりツッコミができる普通のキャラクターが必要だなと思うときがあって。《あかるいねこ》だけだと会話はできないじゃないですか。それでですね。

あかるいねこ、ふつうのいぬ、ハコカリが登場する4コママンガ

あかるいねこ、ふつうのいぬ、ハコカリが登場する4コママンガ

ー 他にもキャラクターはいるんですか?

《ハコカリ》っていうのがいます。あれはホントに落書きで箱を描いていて、ヤドカリみたいに箱を借りて生きている生き物にしたんです。

ー これからも新キャラは生まれていく予定ですか?

周りの人たちに「〇〇描いて」って言われる機会があるので、新しいキャラが誕生する可能性はあります!

ー なるほど。リクエストは聞いていただけるってことですね!ファンとしては朗報です(笑)

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楽しく仕事がしたい。だから自分を押し殺し、無理してまでやりたくはない。

《あかるいねこ》や《ふつうのいぬ》はプライベートワークの分類になると思うのですが、クライアントワークにおいて、プライベートワークとの意識の違いはありますか?

ごく当たり前のことになりますが、プライベートワークは私の気分が乗らないと、なかなか筆が進まないということはありますね。

お仕事とプライベートはどのように棲み分けられているんですか?

締め切りが近くて急いで終わらせないといけない時は、終わるまでずっと仕事をしますが、そうでないときは無理せずやるようにしています。マネージメントするのも自分なので。

以前は会社に所属されていらっしゃいましたが、フリーランスになられた際に不安はなかったですか?

それは、ありましたね。今も不安はずっとあります。自分の周りで活躍している人を見ていると、プレッシャーになるし、自分もどうにかしないとってすごく思います。

充分ご活躍されているイメージがありますが。

ホントですか?私としては、もっと頑張るところや見てもらえる場が増えて欲しいと思っています。

ー 目指しているところや、理想像みたいなものは持っていたりされますか?

今よりもっとたくさんの人が、自分の絵を見てくれるように頑張りたいです。あと、ずっと楽しく仕事をしていたいなと思っています。お金面で待遇が良いものでも、自分を押し殺してまではやりたくなくて。その仕事をしている期間、心が死んでしまうくらいならやらないほうがいいし、私よりも適任の方がいると思うんですよね。

ー 楽しさに勝るものはなかなかないですもんね。今までされたお仕事の中で、忘れられないものはありますか?

とあるビールの広告の背景を描くお仕事があったのですが、90cm×90cmの黒板にタイポグラフィをいっぱい描くっていうもので。そういったことは今までやったことがなく、いきなり任された時はびっくりしましたし、やってみても大変でしたが、大変だった分やりがいがありました。しかも、それが表参道などの主要駅に掲示されていて、広告業界とは無縁だと思っていた自分が、そうやって人目につくところに出られたことがすごく新鮮で面白かったです。それと同時に、広告の人はすごいことをしているんだなって、改めて思いました(笑)

徳永さんが背景のタイポグラフィを担当されたビールの広告

徳永さんが背景のタイポグラフィを担当されたビールの広告

やっぱり、人に見てもらって、認めてもらいたいという気持ちが少なからずあるということですよね。

そうですね、あると思います。自分だけが満足できればいいというものでもないし、せっかく作ったからには見てもらいたいという気持ちはもちろんあります。感想も聞きたいし。制作したものを「見ましたよ!」って言われると、やっぱり嬉しいし、力になりますね。

あまりないとは思うのですが、もし否定的な意見を言われたらどうされていますか?

「うーん、そっか」ぐらいで、あんまり気にしてないです。アドバイスは前向きに受け止めたいし、何より、見てもらえないほうが凹みます。

話は変わりますが、徳永さんは映画がお好きということで、好きな映画からインスピレーションが湧いてきたりすることはありますか?

あります、あります。仕事にすぐ反映できるかというと、そうではないのですが、良い映画を観たとあとはその作品の絵を描きたくなりますね。イラストを描くことによってその映画をもう一度咀嚼できますし。多い時だと月10本くらい観るときもあります。場所は映画館だったり、家だったり決まっていませんが、なるべく週に一度は映画館に行くようにしています。

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イラストを描かれる際は、どのようなソフトを使っていらっしゃいますか?それともアナログ方式ですか?

今はほとんどiPadで描いてます。もちろんPhotoshopやIllustratorも使いますが、ラフから線画は全部iPadでやることが多いです。アナログの時もありますが、効率的に考えてもiPadの方がいいんですよね。質感などに重きを置く方の場合は、iPadを使うのは向いていないと思いますが、私の場合はキャラクターの動きや表情に力を入れているので、あえてアナログにこだわる必要もなくて。

今のスタイルになってからどのくらいですか?

一年弱ぐらいですかね。一回使ってみたら、すごくよくて。そこからです、今のスタイルになったのは。

ー 私からすると、徳永さんは手の届かない人イメージがあるんですが、徳永さんからみてこのイラストレーターさんすごいなって思う方はいらっしゃいますか?

います!みなさんすごいです(笑) たくさんいるんですけど、挙げ出したらキリがないから(笑)

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自分が納得できるかが大切。

ご自身の中で、自分のここは好きだなって思うところがあれば教えてください。

好きなことには、のめり込めるところですかね。絵もずっと描き続けているから、ある意味のめり込んでいることの一つです。あとは、要所要所でいつも何かにハマっていて、今は久々にマンガにはまっています。特に、《キングダム(※2)》と《ゴールデンカムイ(※3)》が面白くて、何回も読み返しています(笑) その瞬間瞬間で、映画だったり、俳優さんだったり、音楽だったり、絶えず何かに没頭できる時期があるのは、そのほかの雑音に惑わされなくていいなって。自分の好きなものがあれば楽しいんですよね。それが良いことか問われてしまうと、良いか悪いかはわからないのですが。周りには流されづらい方かもしれません。

※2 キングダム:原泰久による歴史漫画で、「週刊ヤングジャンプ」にて連載中。既刊39巻。「第17回手塚治虫文化賞」ではマンガ大賞を受賞し、2012年からテレビアニメも放映された人気漫画。

※3 ゴールデンカムイ:「週刊ヤングジャンプ」で連載されている野田サトルの一攫千金サバイバルマンガ。舞台は北海道でアイヌ語がよくでてくる。単行本は9巻まで発売されていて、2016年には「マンガ大賞2016」で見事1位を受賞した。

逆に、ご自身のここを変えられたらいいなみたいなとこってあったりされますか?

色々ありますけど、もう少し色んな人と話せたらなーとは思っています。イベントとか展示も結構行くんですが、友達といることが多く、知らない方と話す機会ってそんなになくて。相手の方が私を知らないと、なんのとっかかりもない気がしてしまって「どうも、初めまして」って行きずらいんですよね。

それは確かにありますよね。

心の中では行こうって思うんですけどね(笑)

ー すごくわかります(笑)先ほど音楽の話も出ましたが、お仕事中音楽を聴かれたりはされますか?

基本無音ですが、たまに聴いています。

もし差し支えなければ、何を聴いているのか教えていただきたいです。

いろいろ聞きますが、最近はよくクラシックを聴いています。全然詳しくないのですが、グレングールドのピアノ曲とかを。 テクノとかと同じようにクラシックって聴いていてすごく心地がいいなと思っています。好きな曲はベートーヴェンの第7交響曲第2楽章です。

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ー イラストやデザイン以外で、もし機会があれば今後やってみたいと思うものがあれば教えてください。

映画に携わるお仕事はしてみたいですね。イラストやデザインで、フライヤーやポスターを作らせてもらえたら一番嬉しいですが。イラストやデザイン以外でだったら配給会社に入るのもいいなって。今はフリーランスですが以前は会社員だったので、会社を辞めた時に「新しいことをするなら30歳までにやったほうがいい!今しかないよ、今が分かれ道だよ!」と、とある人に言われて、配給会社に本当に転職しようかなって考えた時期もありました。制作側もやれるならやってみたいです。

最後に、これだけは絶対に妥協できない!っていうことがあれば教えてください。

これというものは説明すると難しいのですが、私じゃなくても成り立つようなイラストを頼まれるのには抵抗がありますね。 自分が納得できないものや、誤解を与えてしまうようなものは、なるべく受けないようにしています。あとはやっぱり私自身が面白いと思えることですかね。

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徳永 明子

多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業
デザイン会社に所属後2014年よりフリーランス

イラストレーター、グラフィックデザイナーとして
挿絵、漫画、キャラクターイラスト、タイポグラフィ、書籍デザインなど幅広く手がける。

オリジナルキャラクター「あかるいねこ」の作者

オフィシャルサイト
http://toacco.com/
Instagram


 

Mana Ohtake