滑りには、志や生きざまが反映される《後編》| HAKASE from Diaspora Skateboards

No.005

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今回もDiaspora Skateboardsメンバー・HAKASEさんをインタビュー。スケートボードを通じてHAKASEさんが成し遂げたいこと、そして、新しい世代に引き継ぎたい想いとは一体何なのか?


スキルとカルチャー、どちらにも目を向けてほしい。

ストリートと大会では、滑り方が全然違いますよね。

そこなんですよね。大会は、だいたい大会用の場所がセッティングされていて、その場所でどれだけ難しいトリックを時間内に失敗せず決められるのかっていうルールのわかりやすさがあります。ストリートだと滑る場所が毎回違うから、適応性が求められる。でも、昔は大会に出ることが当たり前だったみたいです。僕がスケボーを始めるちょっと前までは、スケボーは大人、特に、大人の悪い兄ちゃん達がやるものっていう時代だったので、キッズスケーター自体いなかったんですよね。

正直、ちょっと怖いというか、近寄りがたいイメージありますもん(笑)

さっきも話しましたが、今から20年くらい前までは、大会っていうとうまい兄ちゃんがいっぱい出場していて、中高生は一生懸命練習するけど下手くそだったんです。それが今では真逆になり、子供達が全員うますぎちゃって、大人が出場しなくなってるんです。言い過ぎのように聞こえるかもしれないですが、年齢が下がれば下がるほど技術が上がっていってます。

昔は、大会で入賞もできるし、ストリートでもカッコよく滑れる、「魅せる」スケートができる人が結構いたんです。けど、今はそこのふたつはきっぱり分かれてしまっていて。両方できるに越したことはないはずなのに、今では差別化されちゃっているんです、違う言語かな?ってくらいに。大会に出ている子達からしたら「何がストリートだよ、下手くそじゃん。下手なことを言い訳にしないでよ。」っていう気持ちも理解できます。でも逆に、そういう風に言われてるストリート重視の子達からすると、「大会でいくら勝とうが、結局ダサくない?」「スケボーはカッコよくてなんぼだから。」っていうことになるんです。ほんとに真っ二つなんです。

元は同じものなのに、ふたつに分かれてしまっていることに対して、HAKASEさん的に危機感はありますか?

僕はどっちもつまんないなって思っちゃってます。スキルがある子達に対しては、いろいろな見せ方があるのに、それをしてなくてもったいないって思ってしまうし、逆にストリートの子達はに対しては、スキルを上げる努力もしないくせに、ダサいとか言えないだろうって思っていて。僕はどちらも見て育ったので、大会には出ずにストリートで滑るにしても、スキルはあったほうがいいと思っています。必要最低限できないとかっこいいなんて言われないんだよってことを証明したいですね。

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なるほど!それは見せつけて欲しいかも(笑)私みたいな素人でも、どっちもできたほうがいいと思いますもん。

そこは結構意識しているとこではあります。MORTAR(※1)はどちらかと言うと、スケボーファッションやカルチャーを推しているお店なので、来てくれる子たちも、ファッション寄りの子が多いです。最初からスタイルのかっこよさだけを見て育っちゃうと「別にスケボーってうまくなくてもいいんだ」て捉えてしまう子もいて。スタイルがかっこいいクルーはいっぱい存在していてますが、そういう人たちはだいたいスキルも持ち合わせているんです。大会とかの動画を見ると、例えばですけど、100個くらい技が出てくるわけですよ。でもストリートのビデオでは比較すると、技は10個くらいしか出てこなくて。そこから学ぶだけだと、結果10個の技を覚えるのも難しくなるんです。

※1 2016年3月に渋谷ファイヤー通りにオープンした、スケートボード × ファッションを枢軸に、アートとカフェも融合したコンセプチュアルなセレクトショップ。

そういうことですね。最大が10個だから、それ全部マスターするのは難しいってなってしまっても確かにおかしくはない。

そう。だけど大会を見て練習する人は、100個ある技のうち、半分の50個は覚えようとするわけで。100と比べると、50はたった半分じゃんて思うかもしれないですけど、10個から比べたらかなり多いいじゃないですか。ストリートでうまい人たちは、多分100個練習したとこを通ってるんですよ。そこを通った結果の10だから、技のクオリティもおのずと違うんですよね。だから、お店に来てくれる子達と一緒に滑る時は技術も教えてあげたいと思っていて「こういうの見たほうがいいよ」とか、助言もしています。

ー HAKASEさんのスケボーに対する真剣さがすごく伝わってきます。

でもめっちゃむずかしい(笑)めっちゃ難しいんですけど、続けたい。僕が中高生の時に見ていたビデオに、日本人のプロスケーターの人が出ていて、その人はプロなのにいっつも同じトリックをしていたんです。雑誌を見ても、その得意技ばっかり決めてるんですよ。「この人これでプロスケーターなの?得意技しかできないじゃん」って当時は思っていて。その後上京して、その方と実際に一緒に滑る機会があったんですけど、生で見たらそれはそれは全然違いましたね、その得意技。僕もその技はできるんですけど、クオリティが天と地の差ぐらいありました。

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全ての技を磨こうとすると、どれも平均的になってしまう。だからと言って、限られた数の技をできるようにすればいいわけでもない。

先ほど、天と地の差ぐらい違うと言われていましたが、具体的にどう違ったんですか?

うーん、言葉で説明するのは難しいんですけど、まずスピードですかね。めちゃくちゃ速い。たまに街でスケボーをしている人見かけたりしますよね?はじめたての子と、10年やってる人を比べたら滑りのなめらかさが全然違うんですよ。スケボーになんて乗らないで、走ったほうが早いのでは?って感じてしまう子もいるし、見ていて危なっかしい子もいる。めちゃくちゃうまい人はスケボーに乗ってることが歩くことよりも自然に見えるんです、ホントに。それもパッと見でわかる。足の代わりなんですよね、板が。だから、それでトリックをきめると、もはやアートの次元にいるように思えてくるんです。

なるほど。アートってことは表現力もあるわけですね。

そうですね。トリックを決めてからスムーズに行くし、無駄も一切ない。そのあと流れるように着地して先へ進んで行くまで、全体通して「今の技なんだ?!」ってなるんです(笑)

ー 衝撃でしたか、生で見られたときは?

衝撃でしたね。これがプロスケーターか!と思いました。プロスケーターということを、まじまじと見せつけられた気分でした。

俺が目指すとこはココだ!と。

そうですね。これはあくまでも僕の意見ですが、100個の技を習得して一つ一つ磨こうとしたら、どうしても全部が平均になってしまう。本当の天才だったらそんなことないと思うんですけど、平均でうまいレベルだと、世界ベースで見た時にそういう子たちが山ほどいるわけで。日本で見たら、うまいすごいやつになれるけど、世界で見たら、『日本からきたうまいやつ』扱いになってしまう。『日本から』っていう日本を強調した見られ方。From Japanが付いてしまう。結局、世界基準で見てもらえないんですよ。

でも、「俺はこの技を突き詰める」って人生かけてやっている人は1つの技を極めるので、「あー、この技と言えばあいつだよね」ってスタンドアウトできるんです。スケボーの歴史から見ても、あの技ならこの人ってマップにピンが打たれるような感覚で。それくらいのオリジナリティなんです。

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おっさんになっても、滑り続けていたい。

ー 何かのインタビュー記事で、HAKASEさん自身はオールラウンダーだというのを見たんですが。

1つの技を追求している方と比べて、僕は満遍なく全部やるスタイルなので、オールラウンダーって言われるのかもしれないです。自分の近くにいる若い子たちよりは、意識的になんでもやるようにしていますね、そういう子たちに見せたいから。単純に、できないよりできたほうがいいと思うし。東京の子たちは、ファッションやカルチャーへの優先度が高い子が多く、自分はイケてるスケボーをしてるって思い込んでいる子たちもいます。そんな子たちに警鐘を鳴らすというと大げさかもしれないですが、危惧はしていますね。

今の職場で働き始めたきっかけはそういうことも理由のひとつにあるのですか?

100%そうではないですけど、ここで働く理由には少なからず関わっていると思います。ファッションも含めてストリートでかっこよいスタイルは僕の理想とするスケーター像ですけど、僕と同じ考えの子ばかりではないと思うので。ファッションが好きでお店に来てくれるのもうれしいですが、技術は磨かなくてもいいやって思っちゃっている子たちに少しでもスケートの技術を上げて欲しいです。逆に技術のみに注力している子に対しては、ファッションやカルチャーも好きになってもらいたいです。

どちらも欠かせないということですね。

両方とも高めていこうっていうのが僕《Diaspora》の目標でもあります。アパレルも音楽もスケートもちゃんとやりたい。でも、お店で働くのもすごく楽しいし、スケボーをがむしゃらに頑張ってくれる子達に道を作ってあげて、アドバイスをするのも僕は楽しいなって思ってます。

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今後の展望について教えてください。

歳をとっておっさんになっても、滑り続けることですかね。続けていれば、「ああ、なるほど、今の滑りがあるのかはこういうことか」って、生い立ちやそれまでの生活含め、僕のことを理解してもらえると思うんですよ。ある46歳のプロスケーターがいるんですが、その人、最近すい臓がんになってしまって。その人は入院する直前までスケボーをしていて、病気になる前は、スケボーってこうやるんだって常に最前線で見せてきた人だったんです。みんなずっとその人を見ていたから、応援したくて自然とその人のために募金活動が始まって。うまい下手じゃないんですよね、本当に。重要なのは気持ちで。なので、おじいちゃんになっても続けられたらなって思っています。

ー 最後にここだけは曲げたくない、もしくは、これは自分のスタイルだなと思うところを教えてください。

これ一言で説明するのとても難しいです(笑)うーん、今もそうですけど、ビデオを撮ったのとか見直すと、自分の手の動きとかあんまり好きじゃないなって思うんです。結構ぎこちないし、ダセェなって(笑)

ー え?今もですか(笑)?

はい(笑)あんまり自分のスケボースタイルが好きじゃなくて、平均的に見てもダサい部類に入ると思っています。逆に、手の動きまですごく自然でなめらかな人もいるので、そういう人の動画を見て、意識して練習すればダサいのも直せるとは思うし、実際に、コピーしてやっている子たちも多いんですよ。手の動きまでちゃんとしていた方がかっこいいていう言い分もわかるんですけど、服装も動きもマネして「どんだけコスプレすりゃ良いの?」って、僕は思ってしまう。どんなにぎこちなくても、それが自分の動きだから、矯正してまで無理に直そうとはしたくないし、スケボー界にもトレンドはあるんですが、それには媚びず、自分のスタイルを貫くことを常に考えてます。

ー 深い。かっこいいですね、すごく。

いやいや、そんなことないですよ(笑)

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HAKASE

Diaspora Skateboardsの創立メンバー。

長野県出身。現在は拠点を東京に移しDiaspora Skateboardsとして活動中。渋谷区・神南にあるMORTARのショップスタッフでもある。


オフィシャルサイト
http://diasporaskateboards.com/
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Mana Ohtake